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なるほど! 社会教説 “しろはた”

第19回:労働(3)

 人は何のために働くのか? それは、自分が食べるためである同時に、充実した人生を送るためでもあります。人間には、誰かに必要とされたい、誰かの役に立ちたいという欲求がありますが、それは人間が他者に開かれた存在だからです。食べるためだけの仕事では、おなかは満たされても、心は満たされないのです。

 これは、奇麗事を言っているのではありません。仕事に対するこのような視点がないと、さまざまな問題が生じます。儲かればいいというビジネス観だと、環境破壊や健康被害、詐欺、搾取といった人権侵害に容易に陥ってしまします。さらには、ビジネスのために戦争さえも起こすのです。私たちは、それらの具体例と被害者たちの悲劇を数多く目にしてきました。ですから、収入だけを労働の目的とする考え方には断固反対します。

 また、働く人の心が満たされるようにとの配慮がないと、「賃金を支払ってやっているのに、つべこべ言わずに働け」とか、「ここがいやなら、他へ行け」という、一方的な労使関係が生じかねません。その人の心を無視することは、その人の尊厳を傷つけることです。働く者がだれでも、金銭面だけでなく、心を持つ人間としても大切にされなければなりません。


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