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聖書各書のミニ知識

ヨハネの手紙 一、二、三

ヨハネの手紙は、ヨハネの手紙1、ヨハネの手紙2、ヨハネの手紙3と3通あります。

「手紙」とあるもののパウロの手紙のように、差出人、宛名や挨拶の言葉もありません。しかし、この手紙は特定の状況にある人々を意識した司牧的な説教とも言われるもので、愛と配慮にみちたものです。著者は自分の託されていた信徒たちを愛し、託されている教会にこれらの手紙を送ったと考えられています。

キリストの死後、最初の頃のキリスト者は生き生きとしていましたが、紀元1世紀ころにもなると、キリスト教諸規範もだんだん習慣化してきました。

また、ギリシャ世界全般が精神のみが善であり、物質は悪であるというグノーシスの思想の傾向の中にありました。人間の霊、精神、知性は肉体という物体の中に閉じこめられているので、それらを解放しなければならないという考えが横たわっていました。この思想の元では神が人となられたという思想は不可能なことでした。

また、ユダヤの偽教師はイエスがメシアであることを否定しました。また、70年のエルサレムの神殿崩壊の事実からもユダヤの人々がイエスをメシアと受け止めるのは困難なことでした。

これらのことから言えることは、キリスト教存在そのものが危機に瀕していたということです。そこで手紙の著者は司牧的な愛で、愛してやまない教会を守ろうとしたのです。

著者は、キリスト教内でグノーシス的な異端に陥っていく人に対して、また、教会外部の異端者たちに対して、正統的キリスト教思想を主張しています。

この手紙は「わたしたちがこれらのことを書くのは、わたしたちの喜びが満ちあふれるようになるため」であり、「これらのことを書くのは、あなたがたが罪を犯さないようになるため」にということです。

著者について

伝統的に3つの手紙は使徒ヨハネによるものとヨハネによる福音書の記者を指導者とする教会メンバーの1人で、後に独立した教会の指導者になった人と言われています。しかし、第二、第三の手紙が第一のそれと比べ、内容も乏しいにもかかわらず、教会の正典として長いこと保存されてきたのは、使徒ヨハネのような重要な人物が著者と考えられていたからとも言えます。

一般にヨハネの手紙は、第4福音書の著者使徒ヨハネという伝統的な説が指示されています。

時代と場所

ヨハネの手紙1は、90年後半、ヨハネの手紙2、ヨハネの手紙3はそれよりも遅い時期1世紀から2世紀初めに書かれたと考えられています。書かれた場所は、使徒ヨハネが居住したエフェゾと伝えられています。

ヨハネの手紙の構造と内容

ヨハネの手紙、ことに第1の手紙は、ヨハネによる福音書のテーマ、言語と似ています。神の子の託身、神の子の派遣によって示された愛、光と闇、真理と偽り、命と死、信仰と不信仰、愛と憎しみなどのテーマについてです。

ただ、終末論については両書の発見段階の違いがあります。福音書では、現在化された終末論について述べられていますが、手紙の方では終末は将来のこととして描かれています。

ヨハネの手紙 二は、わずか13節、ヨハネの手紙 3は15節からなる短い手紙です。これらは手紙の様式を備えています。

ヨハネの手紙 二は「選ばれた婦人とその子たち」とひとつの特定の教会が擬人化されて描かれています。

ヨハネの手紙 三は、ガイオという特定の個人に宛てられた手紙です。

ヨハネの手紙 一

Ⅰ:序
   1.1~4
命の言(ことば)
Ⅱ:本論
   1.5~5.12
1)神の光の中を歩む
(1.5~2.27)
・神は光
・弁護者キリスト
・新しい掟
・反キリスト
2)神の子として生きる
(2.28~4.6)
・神の子たち
・互いに愛し合いなさい
・愛と信仰のおきて
・偽りの霊ち真実の霊
3)愛と信仰
(4.7~5.12)
・神は愛
・信仰の勝利
・イエス・キリストについてのあかし
Ⅲ:結び
   5.13~21
永遠のいのちを知る

ヨハネの手紙 二

Ⅰ:序
   1~4
はじめの挨拶
Ⅱ:本論
   4~11
真理と愛
Ⅲ:結び
   12~13
終わりの挨拶

ヨハネの手紙 三

Ⅰ:序
   1~3
はじめの挨拶
Ⅱ:本論
   5~12
宣教者を助けること
Ⅲ:結び
   13~14
終わりの挨拶

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