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聖書各書のミニ知識

コリントの信徒への手紙

コリント

コリントは、アテネから約80kmのところにあるペロポネソス半島内の街で、ペロポネソス半島とギリシャ本土を結ぶ地峡です。ギリシャの北部から南部への交通はコリントを経由しなければならないといった地理的条件からコリントは商業、貿易の中心地の一つとなっていきます。
 この地は、紀元前6世紀頃から、繁栄した商業都市として全国に名を馳せていました。海上貿易でさらに発展し、強力な軍をもつ都市ポリスへと成長しました。

コリントには競技場があり、そこではコリント地峡の大競技会が2年目ごとに開かれて、この競技と祭典にはローマ帝国各地から競技者や見物人が集まってきました。

コリントはまた不道徳な生活のゆえにも有名でした。
 コリント地峡にはアクロポリスの丘がそびえたち、その上にアフロディテという女神の神殿があり、そこでは多くの巫女が宮仕えをしてしましたが、彼女らはまた女神に捧げられた売春婦でもあったのです。コリントの娘といえば、娼婦を暗示するようなものでした。
 コリントは富と贅沢、酒食と悪徳、風紀の乱れなどの代名詞ともなっていました。

繁栄あるコリントの町は、紀元前146年にローマ帝国にやぶれ、町は廃墟と化しましたが、紀元前46年にユリウス・カエサルによってコリントはローマ帝国の植民地として再建され、新しいコリントの町ができました。再建されたコリントはローマ領土州アカイアの首都ともなったのです。
 この地には沢山のユダヤ人や、フェニキア人、フルギア人など、雑多な人種がいました。

パウロとの関係

パウロがこの地を訪れたのは、紀元50年頃、第2回宣教旅行においてでした。エフェゾをのぞいて他のどの町よりもパウロは長くコリントに滞在しました。パウロのコリントの状況は、使徒言行録18章に書かれています。

コリントの教会は、約1年半にわたってパウロにより福音が述べられ、豊かな実を結びました。ところが使徒がコリントをあとにしたのち、他の人々、特にアポロがコリントで宣教したため、彼らのうちに党派ができ、コリントの教会に分裂がおきました。主にユダヤ教から改宗したユダヤ人キリスト者と異邦人キリスト者との間でさまざまな問題が起こりました。

このような知らせを受けたパウロは、第3回宣教旅行において約3年にわたって滞在したエフェゾからこの手紙をしたためました。エフェゾ滞在の後、パウロは第2回コリントを訪れています(使徒 20.2~3)。ただ、パウロが何回コリントを訪れたか、何回コリントの信徒にあてて何回手紙を書いたかということは、非常に複雑で、議論されています。

コリントの信徒への手紙 一

一般的に、「コリントへの信徒への手紙1」の手紙は、パウロがエフェゾで書いたというのが、定説です。

この手紙は、論文形式ではなく、忠告、回答、反省、懇願、自己弁護で成り立っているものです。パウロがこの手紙をしたためたのは、コリント教会訪問後に生じた教会内部の分裂、混乱に対処するためと、コリントの教会からの質問に答えるためでした。

「コリントへの信徒への手紙1」は、大きく2つに大別できます。第1部では、党派と醜聞を戒め、第2部では寄せられた5つの質問に答えています。最初の挨拶の後、パウロはその教会にあった分裂や醜聞、福音についての無知を述べます。 真の英知は福音にこそあること、主から遣わされた宣教者に対して、神の言葉ゆえに尊敬をもつこと、決してかれらをさばいてはならないことです。

また、福音の真の使徒、道徳的不秩序についてしるし、キリスト者間の訴訟や異邦人の裁判官への請願を批判しています。
 種々の問題の解決:結婚の義務と権利、その不解消性、独身生活、両親と子女に対する勧告などについて述べます。

偶像に供えた肉については、実際に存在しない偶像にささげられたものだから、自由に食することができると言います。

使徒は自分の宣教で生活する権利を有しているが、パウロは信徒に養われることをいさぎよしとしないこと、偶像崇拝者たちの宴会にあずかるようなつまずきを避けること、しかし、もしつまずきとならなければ、偶像にそなえられた肉を食べることができるとも言います。集会において、男はかぶりものをかぶってはならず、女はベールをかぶるべきこと、聖体の制定と聖体拝領の内的準備について述べています。

霊的たまものは教会の全体の益のためであり、教会はキリスト者を肢体とするキリストの神秘体であること、どのたまものも愛にまさるものはなく、この愛なしに、すべては死んでしまい、反対に愛のうちにすべては生かされること、預言のたまものは言語のたまものにまさり、解説なしに言語のたまものは信徒にとって無益であること、集会において霊的たまものの使用上の実際的規則を述べます。

キリストの復活について。キリストの復活は、キリストの多くの出現によって証明されること、イエスの栄光をもってよみがえられたように恵みのうちに生きるすべての信者もまたよみがえるであろう。それは世の終わりに起ることであること。そして善人はキリストとともに最後の勝利の歌を歌うであろうこと、そしてこの手紙は、エルザレムの貧者たちのための拠金の勧めをもって結ばれます。

最後はすべてのコリント人に対する挨拶と祝福の結びの言葉になっています。

コリントの信徒への手紙 一 の構造と内容
序文 第1部:コリント教会の分裂と混乱 第2部:コリントの教会から寄せられた質問への回答 結び
1.1~9 1.10~6.20 7.1~15.58 16.1~24
1)挨拶
(1.1~3)
2)感謝
(1.4~9)
1)分派の争いと真の知恵
(1.10~4.21)
 ・コリントの教会の内部分裂
 ・神の力、神の知恵である
 ・十字架につけられたキリストを宣教する
 ・神の霊による啓示
 ・神のために力を合わせて働く
 ・使徒の使命
 ・聖霊の住まいである体
2)キリスト者の生活の実際的教訓
(5.1~6.20)
 ・不道徳な人々との交際
 ・近親相姦の問題
 ・信仰のない人々に訴え出てはならない
1)結婚と独身
(7.1~40)
 ・結婚について
 ・主が定めた生き方
 ・未婚の人たちとやもめ
  2)偶像礼拝への参加について
(8.1~11.1)
 ・偶像に供えられた肉
 ・使徒の権利
 ・偶像への礼拝に対する警告
 ・すべてを神の栄光のために
  3)キリスト者の集会において守るべき秩序
(11.2~34)
 ・礼拝でのかぶり物
 ・主の晩餐についての指示
 ・主の晩餐の制定
 ・主の晩餐にあずかるには
  4)霊の賜
(12.1~31)
 ・霊的な賜物
 ・一つの体、多くの部分
 ・最高の道である愛
 ・異言と預言
 ・集会の秩序
  5)復活についての正しい教え
(15.1~58)
 ・キリストの復活
 ・死者の復活
 ・復活の体
・エルサレム教会の信徒のための募金
 ・旅行の計画
 ・結びの言葉

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