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新世紀ルーツへの巡礼
6--3 旅、そして旅
11) ベルティーノ神父の証言からみる中国(5)
ロアッタ神父:
パウロ家族の新しい世代に、そして……また、今まで歩んできて疲れを感じているかもしれない年長の世代に、何か一言おしゃってくださいますか。
ベルティーノ神父:
聖パウロ修道会が、世界中で展開している使命に強く引かれる人々に、修道会が提供できるのはどんな理想なのかを徹底的に研究し、評価します。それは聖なる理想、世界的広がりをもつ理想、純粋で勇気ある若者たちの人生を満たすにふさわしい魅力ある理想です。知性とタレントと言葉の能力を明け渡す、イエスがさらに教え、力づけてくださることができるように。両手を明け渡す、彼がさらに祝福し、導くことができるように。心を明け渡す、彼がまだ愛することができるように。いのちを明け渡す、彼が私たちの間で生き続けることができるように。忍耐もとても大切です。自分をつくっていくためにも、生涯をとおして神に答えていくためにも、きわめて必要な徳です。
忍耐の徳は中国人のなかに深く根づいている徳ですから、若い世代のパウロ会士のなかにその徳が生きられているのを見たならば、彼らがついてくることは間違いありません。中国は、忍耐深く福音に向けての解放を待っています。召されている若い人々の忍耐は、神のときが来たら必ず報われるでしょう。
1987年7月、ベルティーノ神父は中国を訪れました。香港から南京へ入りました。南京では2日間の滞在となりました。濃密なスケジュールでこの大都市を訪問し1949年まで中国の首都だったこの都市は、とてもきれいになっていました。
彼は、30年代と40年代に使徒職を展開したところであったこの地に非常に関心がありました。彼は、1947年から48年に建てた聖パウロ修道会の修道院を見つける幸いを得ました。付き添いの通訳に同伴されてタクシーで行き、彼らの所有地に立つことができたのでした。30年を経て、自分たちが使徒職を始めた場所、家を見たときは、それはそれは大きな感激でした。以前の家の上に一階が加えられ、中学校になっていました。しかし、小さな印刷所を建てたほうは、修道院から50歩ぐらい離れたところでしたが、そこには5階建ての近代的な住居が建っていて、周囲にも家が幾つもできていたのをみました。彼がことのほか望んだこと、1948年8月4日に南京で亡くなった懐かしいヴィットリオ・ボネッリ神父の墓には残念ながら、行くことができませんでした。
当時すでにキリスト者の墓地になっていたところで、市街地から4キロぐらいの小高い丘でしたが、現在の中国には墓というものは存在しないということがその理由でした。小さい家族墓地はたくさんあったものの、すべて耕作されて、農産物増収のために使われていました。市民の墓地も破壊され、建築計画やら都市計画に組みこまれていました。
7 月25日の夕、北京の豪華なホテルで送別パーティーがあり、イタリア・中国文化協会から中国代表が出席し、にぎやかに意気盛んに送別のあいさつや歌が交換されました。それからホテルに戻り、通訳に案内され同伴されて、スーツケースをもってバスに乗り、北京空港へと向かった旅でした。26日無事にミラノに到着しました。
こうしてベルティーノ神父の、中国での「長い行進」が無事に終了したのです。これが、ベルティーノ神父の中国への最後の旅行となったのです。
彼は、この時の日記を次のように結んでいます。
中国の発展が社会生活の基本的価値においても、つまり、表現とコミュニケーションの自由とか、思想の交流や、特に宗教の真の自由という価値の面で進歩していくものであり、こうして、中国のキリスト者共同体がもっと自由に呼吸できるようになることを心底願っています。
こうしたことは、社会、経済、科学、文化といった公共生活のすべての分野、つまり一言で言えば真の進歩に有効な貢献こそできますが、進歩の妨げになることはけっしてないはずです。
現在聖パウロ修道会ではマカオに会員を派遣し、いずれ中国本土に帰還できる日を祈りつつ、使徒職を果たしながら待っています。
◆6--3 旅、そして旅
- 1) 新たな旅のはじまり
- 2) アルベリオーネ神父とシスターテクラ・メルロ はじめて東洋へ
- → 聖パウロに向かって東洋のためにする祈り
- 3) インドへ
- 4) シスターテクラ・メルロ、フィリピンへ
- 5) フィリピン諸島から
- 6) ついに見ることのできなかった中国
- 7) ベルティーノ神父の証言からみる中国(1)
- 8) ベルティーノ神父の証言からみる中国(2)
- 9) ベルティーノ神父の証言からみる中国(3)
- 10) ベルティーノ神父の証言からみる中国(4)
- 11) ベルティーノ神父の証言からみる中国(5)
- 12) ヴァラルド神父の中国への旅の回想から